ドキドキワクワクを感じたUstream
2010年にUstream Asiaが誕生し、日本語化されたUstreamはとても魅力に感じていた。テレビのように編集をされることなく「ありのままをライブで伝えることができるメディア」であったUstreamに魅力を感じた人は自分だけでなかったはずだ。
- 宇多田ヒカルUstream中継の視聴者数は約34万人。最大同時接続数も10万超 -INTERNET Watch http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20101210_413299.html
これだけでなく、
- アーティスト系でいえば「坂本龍一」「向谷実」「ももいろクローバーZ」「DOMMUNE」「東京女子流」「STOLABO TOKYO」「スマイレージ」「淳の休日」「西野カナ(KANA CHANNEL)」「Negicco RADIO」「鬼龍院翔(のオールナイトニッポン)」「漫画家原稿書き」
- スポーツ系でいえば「(プロ野球の)キャンプ中継」「剣道」
- 政治系でいえば「IWJ」「政治」「議会中継」
- 宇宙系でいえば「はやぶさ」「スペースシャトル」
- 身近なところでいえば「(大学などの)入学式卒業式」「富士山ライブ(日の出中継)」「地震速報」
その他、自衛隊観艦式や東日本大震災におけるテレビのサイマル放送など。きっとおそらく多くの場面でUstreamと接した人は多かったはずだ。
Ustreamは「プラットフォームである」ことにチカラを入れた
結果論としてコンテンツに注力していった「ニコ生が生き残った」形になった。だが、「Ustreamはプラットフォームであることに徹したのが良くなかった」の一言で終わらせるべきではない。なぜならば「ツイキャス(Twitcasting Live)」の存在。
近年、ツイキャスは雑誌とのコラボなどでコンテンツにチカラを入れるシーンは見られるが、初期は「スマートフォンから手軽に、電波が弱いところでもスムーズに配信することができ、視聴することができる」ことを徹底的に注力した。その結果、モバイル事情が悪い諸外国でもスマートフォンからライブ配信ができることによって様々な政治情勢などを現地から伝える人も存在し、日本ではスマートフォンを活用する若い人たちにも広がっていった。
Ustreamはプラットフォームであることに徹したのが良くなかったのではなく、「面白いコンテンツが出てくるためのプラットフォームとしての利便性の整備をし続けることができなかった」のが最大の原因ではないだろうか。
プラットフォームを整備できなかった理由
- 開発部隊が海外にあったこと
- アジア圏での裁量が(私たちが予想してるより)大きくなかった?
海外で生まれたサービスがそのまま日本で通用するか?というとそうでないし、逆に、日本で生まれたサービスがそのまま海外で通用するか?というとそうでもない(それは、ライブストリーミングサービスだけに限らない)。
特に2011年から2012年にかけての間は、日本で生まれた要望がUstream AsiaからUstreamへ多く挙げられていたはずだ。でも、それが反映されていかなかったのは、日本から挙がった要望がシステム改善のプライオリティーが低く見られてしまっていたのかもしれない。そして、それをチカラ強く要望していっても改善されることが無かったのは、Ustream Asia自体の裁量が大きくなかった(大きくしていくことができなかった)のかもしれない。
システムを海外で開発する(いわゆるオフショア開発)ようなケースの場合、日本人の感覚を海外に居る開発陣へ伝えることは非常に困難なケースが多々あり、それに類似している感じを受ける。
Ustream Asiaがサービス運営だけでなく、日本に合わせたシステム変更ができるような開発の独自路線を取ることができればもう少しこの状況は変わっていたのかも。
路線の変更の方向性に明暗が別れる
Ustreamで大きな路線変更の代表として挙げられるのは
- ライブ視聴中に挿入される動画CM
がひとつの代表例。YouTubeのようなアーカイブは冒頭に動画CMを流されていてもスキップするか我慢をすれば良かったが、ライブの場合は「いままさに起きていることが見れなくなる」のが(Togetterのまとめを見ても)致命的だったように見受けられる。トーク番組ならまだしも、スポーツ番組やゲーム実況の場合は耐えられない仕様になってしまった。
ちなみに、ツイキャスは配信終了後に動画CMが流れる仕様としたことにより、動画CMが流れてもユーザーにとっては許容範囲であったし、配信中ではなく配信終了後というタイミングを選んだのはユーザーの声をくんで選んだタイミングだったように感じられる。
このタイミングや動画CMそのものについての要望もきっとUstream AsiaからUstreamへ挙がったはずだが、これも前項の理由によって回避することができなかったのかもしれない。
なぜプラットフォームであることにチカラを入れたか
今回Ustream Asiaがアジア圏での運営をUstreamに移った結果となった理由のひとつに「コンテンツにチカラを入れなかったから」論がある。これもひとつの理由であると思うが、なぜ「コンテンツにチカラを入れなかったのか?」の推測のひとつに「TV Bank」の存在もあったのではないだろうか。グループのひとつの企業であるTV Bankと同じ方向性へ向かうのではなく、違うベクトルへ向かう存在のひとつとしてUstream Asiaを存在させていくつもりだったのかもしれない。
Ustreamはいまでも大量の同時接続があっても捌ききれるライブストリーミングサービスのひとつ
企業やアーティストのライブ配信においても「ニコ生ではなくUstreamを選ぶ」ところがあったのは大量の同時接続があっても(ほぼ)捌ききれるライブストリーミングであったこと。それは、Ustream Asiaがアジア圏での運営をUstreamへ移管するいま現在でも変わらないし、その優位性はニコ生にもツイキャスにも優っている。
そして、ニコ生もツイキャスもUstreamも「視聴者と画面の向こうの人とコミュニケーション、視聴者同士のコミュニケーションによって成り立っていくライブストリーミングサービス」であることは同じ。
でも、日本のユーザーがUstreamから離れていったのは、(特に2013年以降)システムとサービスが変わっていかず、ユーザーをドキドキさせるワクワクさせ続けていくことができなかったこと(自分自身もドキドキワクワクが薄れていってしまったこと)が今回の結果につながったのではないだろうか。
Ustreamが再度日本でドキドキワクワクを提供できるのか?
「Twitch」のように正直見向きもされなかったJustin.tvがゲーム配信に特化したAmazon.com が提供するライブストリーミング配信プラットフォームとして再度日本へ登場したように、推論のひとつとして、Ustreamも何らかの形を変えて再度日本へライブストリーミングのプラットフォームとして再登場することも考えられる。
しかし、2010年のときのようにUstreamを魅力を感じて戻る人がいるのか?ということを考えると非常に難しい話のように感じられるが、「視聴者と画面の向こうの人とコミュニケーション、視聴者同士のコミュニケーションによって成り立っていくライブストリーミングサービス」のはしりであったUstreamがどのように変わっていくのかは引き続き注視していきたい。
参考URL
- 「Ustream」運営移管についてのお知らせ | Ustream Asia Inc.
Ustream Asia Inc.|お知らせ - 時代の寵児Ustream、ひっそり撤退…なぜ視聴者&配信側に見捨てられた?甘さがアダ
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